勝手に付箋

こめんと

付箋

最後の試合終はりたる子のユニホーム洗へばながく赤土を吐く
月光菩薩をすこしうへから見下ろせば苦しげな人間の美貌もにじむ
まちがひに気づきてどうしやうもなしアルマジロならしばしころがる
ハイヒールで鋭くも働くことなくて歪まざるまま老いてゆく足
はりつめて若者が返事するときに名に籠もる人への希望かがやく
いつよりか恥づかしがらず髭を剃る息子がをりぬ五月の鏡
三崎なる路地には海の光飛びフウセンカヅラはいつふくらまむ
阿修羅像三つの顔を見しわれの青葉に眩むいくつの顔か
日の暮れの里とふ日暮里駅過ぎてむかし旅せし人のさびしさ
来年はたぶん息子のをらぬ部屋ふと寝て二時間内緒で眠る
パパとママはいまけんくわしてますと配達の人に言ひたる四つの息子
母と聞く青風鈴は澄み澄みて身のおきどころなきやうな風音
笑みをれど五年はわれと友を変へふかくたがひを失つてゐる
深夜までひとりで詠めばこのひとりは去年の秋よりふくらんでゆく
友の夫働かぬことわれのみが怒りて友はひつじ雲描く
何が何でもここに帰ると思はざらむわたくしの街かなしき青葉
灯らない地下街をゆくうちがはの暗い＜わたし＞をそれぞれ灯し
弾むごと揺れし座席にしばし待ち発車したれば行くほかはなし
草食べる花を食べるといふことの何こみあげて菜の花を食ふ