堂園昌彦「やがて秋茄子へと到る」（2013年；海の人）
こめんと
「pool」「ガルマン歌会」の著者の第一歌集。19歳から29歳までの195首。1ページ1首のつくりで、歌数は少ないが、このすうすうとした配置が、歌の雰囲気に合っている。
付箋
ゆっくりと両手で裂いていく紙のそこに書かれている春の歌
あなたは遠い被写体となりざわめきの王子駅へと太陽沈む
前籠に午後の淡雪いっぱいに詰め込んだまま朽ちる自転車
折れた梅さえ心に挿して春先の真面目さは仇になりゆくばかり
空中にわずかとどまる海鳥のこころあなたと雪を分け合う
残像のあなたと踊り合いながらあらゆる夏は言葉が許す
冷えた畳に心を押し付けているうちに想像力は夕焼けを呼ぶ
幾度も越えた心の敷石を撫でればそこに桔梗が咲けり
いつか詩がすべて消えても冬鳥のあなたに挨拶を残したい
生まれた瞬間懐かしくなる歌のように駅の周りで傘は開いた
シロツメクサの花輪を解いた指先でいつかあなたの瞼を閉ざす
