石飛誠一「あこがれ」（2015年；矢積印刷）
こめんと
第4歌集。帯・池本一郎。鳥取県で50年医師を務める。歌から亡くなった息子さんも医者であったらしい事や、娘さんも医者である事がうかがえる。医師としての自分と家族の記録。
付箋
熱心さのみではつとまらぬ医師の道 熱心さなくばつとまらぬも真
「音たてて沢庵噛みたい」晩年の母の言葉をおもいだしおり
明らかに吾が死なしめしと思えるが幾人かあり医の五十年
一人だけ蕎麦の嫌いな子がおりて妻はその子とうどんをたべる
戦時下に鉄路供出するまでは出雲の母里にも通じて居りしと
にわとりは飢うれば鳴きて知らせるに声を持たざる兎やあわれ
子の書きし論文の載りたる医学誌が本棚にあり十五年経ちしが
二十年前につとめし病院で子の友なりし医師を受診す
お互いが同時に怒らぬようにする金婚迎えし夫婦のくらし
