児嶋きよみ「雨のゆふぐれ」（2024年；青磁社）
こめんと
第2歌集。解説・吉川宏志。集中に、「もういちどつらく明るき歌集読む『虹の表紙』は雨粒の飛ぶ」という歌が有った。ありがとうございます。あとがきを読むと第1歌集に続き、エネルギッシュに多岐にわたって活動していることがわかる。第2歌集になって親を亡くしたじんわりとした寂しさが伝わってくる。また逆に親を無事に送り出した安堵感もある。その中でお孫さんの歌は印象的であった。
付箋
ゆれやすき秋の花なり萩の紅こまかき花びら飛ぶひとところ
父宛ての賀状の服喪増え来たり父の賀状は弟が書き
バス停にバス待つひとらそれぞれの空を見てをり冬晴れの日に
西陽背にじぶんの影をつかまむとをさなご手を伸ぶ前へ前へと
母亡くて父も離れし留守の家螺子をまはせば打つ時計あり
カーテンを開ければ朝の空晴れてケアハウスより電話はもうなし
深夜二時あなたの書き来しメールありそのときひとりの時間を持ちしか
春の日は終はつてしまふ一万歩さくらの下をひとり歩く日
半月の色の深まる夕刻に二重跳びしてみせる子と在り
