坂井修一「望楼の春」（2009年７月；砂子屋書房）
こめんと
第７歌集。これまで経験しなかった新しい孤独と向き合わねばなるまい・・・とあとがきにある。
付箋
白秋の歌集を読めば一首作し迢空読めば三首たちくる
ぐーぐつてぐーぐつてまだあきたらずウィキーをひきなほひきたらず
階段をいそぎのぼれば雨もよひぬるき空あり根津交差点
大学の財は教養 声にいひ大声にいふ膝ふるはせて
桐箪笥ふかく日記は眠りたり泣き虫の子を打ちたる母の
風は秋ひとはことばと寄りゆけば霊安棟のうすき影みゆ
ゆふやけが落ちてくるなり根津谷の赤札堂と吉野家のあひ
たとふれば官舎の窓のかぶとむし声なくみつむ首都のゆふぐれ
重力定数ちひさくなりて浮くからだあはあはと昼をあそびやまずも
どうでもいいどうでもいいと鳴く線路省線にありき新幹線にあらず
つつしめと煙のなかのこゑはいふ低きより怒りわきたつときに
地球上最大のみづを海といふ 海は数学のごとくなつかし
ながきながき教授会また委員会 地獄に仏といふときもある
目覚めても寝ても死んでもキーたたく エクセル、ワード、エクセル、ワード
