平山繁実「白夜に生きる」（2022年；本阿弥書店）
こめんと
第2歌集。帯・米川千嘉子。看護師としてコロナに直面して奮闘している。息子さんも看護師でコロナ病棟に勤務しているようだ。そして母親に癌が見つかる。現在進行形で進んでいるせいか歌に緊迫感がある。読む方もせかされる感じがする。それがリアルということかもしれない。
付箋
もち麦をこぼれた命とおもうとき咀嚼回数にわかに増える
両岸のさくらが水面へ枝を伸ばし訊けない問いが水面に浮かぶ
防護衣に身体を覆い体温と息とわが声うちへ籠もりぬ
「頑張れ」は言わず心を傾けてちいさな気泡の音を聞きたり
ゆでたまごうまく剥けない日が続くマンパワー不足の医療の現場
血管に相性がありそれぞれに苦手な患者を把握しており
離職する人をとめない 魂が乾ききってる軋みを聞いて
人よりも看護師として期待されもうずっとずっと白夜に生きる
自死を選る前夜の電話変わりなし言の葉すべて虹の断片
終活の一環なのか訪うたびに実家の木木が伐られて消える
車へと乗り込むときに額から鬼灯のような疲労が垂れる
