嶋寺洋子「父のキャンバス」（2019年；青磁社）
こめんと
第1歌集。跋・小林幸子。カバーには父親の描いた油絵が配されている。琵琶湖畔で生まれ育ち、嫁ぎ、生活してきた作者。子どもを育て、父、母、姑を看取り、介護職として働く。家族が大きなテーマの歌集。
付箋
歳晩にそろへる顔は十一人記念の写真はあちこちを向く
もも子の名庭に遺すと弟は花桃を植う咲けば哀しき
沫雪を乗せ来し列車の滴する朝のホームにひざし明るき
湖を囲へるごとく建つマンション母なる琵琶湖が少し遠のく
湖に近づきたれど水見えぬ家に写真の父母を並べる
父の描きしキャンバス百余残りをり時折並べる画廊のやうに
