児嶋きよみ「月のドナウ」（2013年；青磁社）
こめんと
第一歌集。解説・吉川宏志。世界のあちこちで暮らした経験から国際交流をベースとした歌や、日常風景を細やかに描いた歌がある。海外暮らしの娘さん一家を詠った歌もある。ただ、詠われているものが盛り沢山で、一冊の歌物語として読もうとした時に、少々混乱する部分があるのが惜しい気がする。
付箋
真つ直ぐにぼたん雪ふる厨窓娘らと父待つ母なりし日々
「こまったな」母の口まねしてみつつ引き出しあけてしやもじ取り出す
産み月のせまりて来る娘の腹を男の子は計るまあるくメジャーで
霜月に靴三足は増えて在り月のドナウもたゆたひ来しか
朝の月おぼろおぼろに浮かぶなか子を抱きつつ眠りに落ちしと
母待ちてゆるびゆきつつ眠る子をふとんに下ろし寝息を聞きをり
ふらここに初めて立ちし五歳の子前にうしろにあご上げて漕ぐ
家の裏ばかり見え来る電車なり椅子の上にまた椅子など積まれ
