苅谷君代「初めての青」（2010年6月：角川書店）
こめんと
第４歌集。三井修解説。内容は重いが読ませる。
付箋
指と指絡ませて子の約束は他愛なきことにこだはりてゐる
放たれて矢は過たず月を射るむかしばなしの月また昇る
千羽鶴ささげし君ら十七歳ともに同じ世代の少女
遠くより布団を叩く音がする日翳りゆきて風の吹く日を
水晶体を砕きしのちの眸に映る空あり初めての〈青〉
幻影の君を抱けば岩群の耀きて耳を掠めゆく風
点筆を握れる指にちから込め今日は「レモン哀歌」を写す
夢の中に本を読みたるときめきよ目覚めてなほも動悸はやまず
本当につらいときには壊れない精神がふとした弛みに狂ふ
モジリアニの瞳なき目の寂しさに耐へて飲みほす水の苦かり
夢の中で歌を作りし記憶あり目覚めて惜しきその歌一首
