三原由起子「ふるさとは赤」（2013年；本阿弥書店）
こめんと
第一歌集。帯・永田典子。福島県浪江町出身であることを前面に押し出した歌集。
ここで歌われている義父とは玉城徹。
付箋
城のような駅舎ぽつんと建っている人口一万に満たない町に
パスネットカード刻印されている日付、あなたの住んでいる駅
君に会う前の日、手のつめ足のつめにわたしだけの宇宙を描く
都会から逃れるように上野発特急スーパーひたちに乗り込む
ギター弾く先輩と客席のわたし変わらない距離変われない自分
横座りして君の腰に手を回すその手に君が手を重ねたり
われの書く一行文を一本のペンで一つの短歌に為せり（義父）
権力者の息子をいつしか権力者に仕立ててしまう大衆の罠
iPad片手に震度を探る人の肩越しに見るふるさとは赤
常磐線に乗るたび想う人のいてもう眺めることのできない景色
原発の話はタブーと注意する先輩はまだムラに生きおり
恩恵を受けたと言いし住民の声は敗北宣言に似て
果てしない除染作業に人生を捧げたくない若者われら
下北沢駅北口を出たらすぐ右肩あがりの坂道はあり
二年経て浪江の街を散歩するGoogleストリートビューを駆使して
