豊島ゆきこ「冬の葡萄」（2014年；青磁社）
こめんと
第2歌集。「それはある小さな家族の物語」と帯にある。孫の誕生と成長に寄り添う。
付箋
ぎくしやくと読み始めたる歌集にて百頁あたりから作者とあゆむ
パラゾールの中がくうきになるまでの半年ほどをいかに過ぐししか
蔵造りの商家と商家のほそきほそき隙間に鳴きて小雀はをり
飛び級でポンポンポンとおばあちやんになるわたしなり 今年のさくら
家具といふほどのものなき息子らの新居に銀のフラフープあり
採用通知もらへぬままの二十二歳、子は学生のまま父となる
歳月の蛇腹一瞬ちぢみたりちひさなちひさな新生児見る
もうわれを叱りくるる人あらずして曼珠沙華の茎のやうにさみしい
披露宴会場にとつぜん現はれしベビーベッドに人らどよめく
二階に寝てゐる寝姿ばかり思ひ出す結婚まへの息子おもへば
