駒田晶子「銀河の水」（2009年；ながらみ書房）
こめんと
ながらみ書房出版賞、現代歌人協会賞受賞歌集。自然体でおおらか。20歳から34歳までの作品。常温の魅力と佐佐木幸綱は跋文で言う。
付箋
かからし、と前髪ゆるく振りながらこどものハノンの二番を弾けり
花見山ゆめのようなる山の名をはべらせてわがみちのくはあり
ひとりなり。一夏の読点として階段にひいやりと座れば
おおかたの水こぼれたりわれの手のスプーンより母の口まで銀河
老いぬまま母は消えたりのこされたる祖母が浅漬けのきゅうり噛みおり
つるりとした蛇口を押して振りむいた輪郭の母も薄れはじめつ
母となるわたしに母はもういない滴るほどの春の空なり
ペンギンのチョロＱは翼傾けてフローリングのリビングをゆく
ベランダで髪切ってやる花びらより少し重たきひかりがおちる
ままごとに見えざる人も招かれて見えざるひとつの椀を渡しぬ
