関谷啓子「硝子工房」（2004年03月；東京四季出版）
こめんと
第４歌集。新世紀プレミアム歌人叢書。巻頭言・山下雅人。透明なノスタルジーを 湛えつつ日々の現実を夢想の硝子に透かして眺める・・とある。今は無人となった ふるさとを詠った一連が印象的だった。
付箋
二杯目のコーヒー注ぎて読みはじむ最初の歌にまたもどりきて
歌詠みは誰もが不幸と言いきりし男の顔を振り向きて見つ
少しずつ神経病んでゆくように六日音なく雪降りつづく
また少し痩せて帰りし母ならん生家を捨てる覚悟の父と
積雪に倒れし大小の墓石は雪溶けゆけばあきらかに見ゆ
鳥らしく生きて立派に死なんなど思うことありや庭の雀等
情の濃き家族の歌を読みつぎてわれは羨ましいつか疎まし
鞍馬山越え来てふたたび振りかえる過去も未来も闇のなかなり
