杉山太郎『花鋏の音』（2022年；青磁社）
こめんと
第１歌集。序・栗木京子。2011年から2021年の歌。母の歌が多い。ほとんど自分のことは詠われていない。歌はわかりやすく、しみじみとしている。身の回りの小さなことに、よく目が行き届いている。
付箋
温めることの容易なコンビニに心も頼むと言いたいけれど
その時の思いで風に色がある青い日があり赤い日がある
母の名に吾が返事する病院の付き添いにある長き一日
錠剤が母の手元を転がりぬ春の日差しの届くキッチン
小気味よくキャベツを刻む若主人父に似てくる背の曲がり方
愉しみのエリアは急に狭まりぬ食べられるうちに歩けるうちに
春にまた行きたし哲学の道へ次回は母の思い出連れて
両腕が母の重さを思い出す車椅子から移動の時の
制服とマスクが校門へ続く同じ音符の連続のよう
