池田裕美子「ヒカリトアソベ」（2007年：砂子屋書房）
こめんと
第２歌集。帯、小池光。タイトルは
こよひ雪片ほどに天よりほぐれ落ちて来る死者の音信「ヒカリトアソベ」／浜田到
から来ているらしい。肉親の死にあい、美しい幻想的な景のなかに濃い影が
あるような感じ。
付箋
あさじめるはなびらひらきゆくときを鳥のこえひくひかりはのぼる
秋立ちて水しずかなる池の面に蜻蛉の尾が濁点を置く
抱きゆく黒猫マリの大きくて夢二の女の腕にはあまる
くちなしの香のつきてくる夕ぐれをひとつ遠くのポストへ歩く
革命直後の生まれとチャン・イーモウが言うとおき地熱を木瓜ははな噴く
父の行李のそこに一冊ありたりき啄木歌集がなぐさめし若さ
一対の死者となりたるちちははの安けさを置く日本の秋に
黎明は死者の来る窓あじさいのいまだ幼き毬をかかげて
新盆のははの墓辺のほうたるのあおき首すじひとつふりむく
めくれあがる時間のようなる風はありさくらまつりの千鳥が淵に
勲章と姉の臍の緒しまわるる黴ふく小筥が仏壇にあり
