金井一夫「海外詠」（2019年；青磁社）
こめんと
第１歌集。帯・永田和宏。64歳から82歳までの期間に詠んだ海外詠のみを集めた。イギリス、フィリピン、台湾、アメリカ（ニューヨーク、アラスカ、シアトル、シカゴ）、オーストラリア、中国（香港、四川省、上海、成都、北京、敦煌、西安、チベット、桂林）、インド、ボツワナ、ジンバブエ、南アフリカ、ペルー、チェコ、マレーシア、ブラジル、カンボジア、ロシア（モスクワ、ハバロフスク、サハリン）、スペイン、ネパール、タイ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、クロアチア、ベトナム、ドイツ、モンゴル、ヴァチカン、イタリア、ブータン、キプロス、スリランカ、インドネシアとある。しかも繰り返し訪ねている場所もある。エネルギーに感服する。
付箋
亡き妻をしばし想へりウィンダミア湖水の上の白き浮き雲（英国）
生還を願ひし母の五銭玉兵士は握りし死にたるのちも（フィリピン）
まばらなる灯に旧漢字の看板が街行くわれの空を覆へり（台湾）
ライオンズ国際本部にも合理化は及びて若きらの姿は見えず（アメリカ）
弟の友人の家訪ぬれば雨水沸かして紅茶淹れをり（オーストラリア）
決めつけて物言ふ人に諾はず応ぜず仁川空港を発つ（韓国）
複眼のやうなる硝子のビルに入る光触媒の花葉満ちたり（アメリカ シアトル）
