片岡聡一「海岸暗号化」（2012年：青磁社）
こめんと
第１歌集。解説・真中朋久。歌に家族や仕事がストレートには出ていないし、後書きも無く、著者像があまりはっきりしない。
付箋
高校の夢を見ており 竹内が群れからはなれわが部屋の戸に立つ
その先を思い出せない 十二の夏 船で老女に手相をみせて
Ｃの字は途中でぐっと曲がるから記憶を変える力があるのだ
城の地下 前歩く人誰だろう 首にふきくる適温の風
子供達みんなスルメを噛んでいる川のほとりにその塾はある
幼き日砂場に石をもちこんでわがやをつくるふりをしていた
悲しみは喉と肺に居座って ただひたすらにウォーキングする夜
英単語姪が何度もくりかえし言っておぼえるわれもおぼえる
岐阜よりも西の女は絶対に別れる際に家具を残さじ
あきらめの言葉とびかう道端で手の甲触る癖よみがえる
作文は五分で書こう ためこんだ日本語の渦ななめに横切り
鬼コーチになろうと決めた友がいて体の形も段々変わり
