小中英之「過客」（2003年：砂子屋書房）
こめんと
遺歌集。端正で凄味がある。心に残った歌は多かったがとりあえず６首だけあげた。
付箋
みづからをいきどほりつつなだめつつ花の終りをとほく眺めつ
風の子と一つに遊び暮れし日のほのかなる灯をみつめきしのみ
うづくまるかたちは罪を抱くべく柘榴を置きて家を出でたり
春雷に動かざるもの孤独なり蛇*となるまでを執念く生きよ
クレソンを噛みつつ余白のあるごとく躯に木枯らしを容れてしまへり
町を出てゆく者ばかり見送りて終着駅はたえず海鳴り
*本当は虫偏に也。
