カンハンナ「まだまだです」（2019年；角川書店）
こめんと
第1歌集。Oさんからお借りした。「私らしく生きていくための短歌。詠むことで見つめ直す日本での暮らし。運命のように出会った短歌が私を変えた。私よりも私らしい本当の私が見えてくる。」タレント活動をしているひとだが、そういうことを除いて良い歌集だった。
付箋
ソウルの母に電話ではしゃぐデパ地下のつぶあんおはぎの魅力について
空にいる古い木にいる川にいるニッポンの神 アンニョンハセヨ
焼き鳥を食べに行こうと誘ってよ大学の並木を一人で帰る
スーパーの片隅にある見切り品がまっすぐ前を向くよう直す
らっきょうもオクラもみょうがも君に会い初めて食べた薄暑の野菜
「ああ疲れた」バスタブの中で呟いた独り言まで日本語になり
横に並び母と餃子を包みつつ何も聞かず何も聞かれず
銀座線で揺られた未練を乗り換えの南北線に引きずるなんて
母国から非難を浴びて辛いよねと日本の友が先に泣き出す
「しょうがない」この一言の安らぎを知らなかったはず 二十歳のわたし
匂いには匂いの想いが生きていて醤油の匂う成田空港
