尾崎加代子「樫の木小書」（2014年；青磁社）
こめんと
第2歌集。おさない命に巡り合った幸いを記念しての上梓と後書きにある。
付箋
子を顧みること稀なりし男いま絵本玩具を買ふ爺となる
川なかにすなどる鷺のくちばしが朝のみづに濡れつつ光る
寺々に撞く鐘の音 朝がらす 十一年目の五時四十六分
クロールに息つぎのたびみはるかすガラス天井のむかうの夏空
朝もやの波のはたてに浮びゐし端正なやま甲山なり
ほんたうは三歳だけど飛行機に乗る時は二歳お姉さんにいふの忘れた
花冷えの夜の薬局の棚に消ゆるカイロは被災地に運ばるるとふ
鵯のくる前にみかんにかける袋「塔」の袋もまじりてをりぬ
オリンピックの年にはなると児はいひて柿を鉢から土に移しぬ
