安井高志「サトゥルヌス菓子店」（2018年；コールサック社）
こめんと
著者が事故により32歳で急逝し、母親が出版した遺歌集。塔の人より頂いた本。
付箋
雪のふる駅舎にひとり誰もいない廃墟の町でひびくグレゴリオ聖歌
いつだってあなたの指した棒銀はいなづまみたいに透明でした
幕張の海からはしる銀いろの自転車 ぼくは空を知りたい
水に溶けきえてく病 バスタブのなかに漂うトルコ桔梗と
ひとのいない駅舎でそっと本をとじるもうだれもいない惑星の冬
乳液をなじませる夜、ねたみとはいたわるように撫で回すこと
