菊池陽「次は君だよ」（2020年；星雲社）
こめんと
第１歌集。帯・馬場あき子、解説・米川千嘉子。岩手県の教員だった人。歌はわかりやすく前向き。妻がなんとも魅力的。
付箋
子ねずみがカリカリ食むを思わせるテスト開始の十分前は
刺股が標準装備となっている新築校舎も三年目に入る
校舎裏産きのこ汁の誘いあり用務員室より職員室へ
いつもよりホイッスル少し長く吹く体育教師の最終授業は
「扶養親族無し」となる給与明細嬉しくも寂しくもある吾子の就職
エジプトへ旅立つ朝のホームでの言葉は「ごみ捨て忘れないでね」
すれ違う風に微かな煙草の香同僚も小さな主張を持てり
何もある１００円ショップは何もない自分を１００円色に染めゆく
大合唱のソリストとなり歌う吾子小さくも見え大きくも見え
就活をハローワークで始めれば送り出し来し子ら偲ばれる
入学の手続きをしに来た祖母は「きっと帰ってくると思うので」と
正月を箱根駅伝観て過ごし涙する日本きっと平和だ
