古川利子「金色となる」（2010年：青磁社）
こめんと
第２歌集。帯・永田和宏。「聡明な作者の清潔な視線」とある。
付箋
縫いくれし母の針目を撫でながら古き胴着を捨てかねており
午後の陽のわが書見台に差し入りて読みゆく頁に小さき虹おく
ひとつぶに神様三人と言いし母思いつつこぼれし米拾いゆく
秋ごとに母より届きし栗の実の久しく絶えてふるさと遠し
見送りて小さき手を振る四歳にひかりの窓から応えて別る
今朝もまた事なく明けて温かき朝餉の椀にゆずの香の立つ
乗り越しし夜の小駅事務室に茶を振舞われほのぼのとおり
