坂井修一「古酒騒乱」（2019年；角川書店）
こめんと
第11歌集。あとがきを読むと「乱」を意識したようだ。気持ちはわからなくもないが、下戸の私にはちょっとついて行けない気もする。
付箋
学はただおのづからなれ顔ふせて黙してをれば春雷きこゆ
香をたててのぼりゆきしや死にゆかむ若山牧水そのなかの酒
こもれびよ先生になって二十年無芸小食笑はれながら
上野山、根津谷、本郷七丁目 冬陽の縁をくだりてのぼる
鬼怒川が利根川にあふ陸の端 闇より闇へ水は渡らむ
いちまいの暗闇のおも見せながらさむいさむいと電車がすすむ（地下鉄千代田線）
すぢ雲が消えて綿雲 鴎外がお志げに告げる「退官」の顔
いちはつの咲きてうたびと嘆かせし明治の根岸しづかなりけむ
当麻より二上山をみあぐればステルス無人機天わたるみゆ
フェイスブックに「いいね」してまた仕事してぐちやぐちやにする液晶の顔
東大出版まだ生きてゐるそれゆゑに督促来たりメールたふとし
いまここに空爆あらばいかにせむ声さぶき父を背負ひてわれは
