江國梓「まだ空にゐる」（2014年；本阿弥書店）
こめんと
跋・米川千嘉子。
付箋
エレベーターが呼びもせぬのに待ちをりて真昼の異界へ吾を誘ふ
新妻の娘に伝授するロールキャベツ 葉は破れたら重ねればいい
赤ペンで育てし一人子いまはるか濃尾平野に子を育めり
木漏れ日は吾に届かぬほど弱く人との暮らし望んでしまふ
鎌首をあげてぢーつとゐる蚕 一枚の過去捨て去る前の
新しい会社へ向かふ朝の駅 歩調を合はせるアトムのメロディー
フローリングに青茣蓙敷いて寝転びぬ荒野のわかる人になりたし
使はない便利グッズに膨らんだ３ＬＤＫ去る日近づく
握る手を放さなければ・・・・思ふまい風船をぢさんまだ空にゐる
椅子を挙げゴミ箱よけてロボットの掃除を手伝ふはつはるの陽に
