高田流子「みふぁそら」（2003年：ながらみ書房）
こめんと
第３歌集。岡部桂一郎の帯文がすてき。「ゆるやかなテンポの中に醒めたはげしさがある。軽さに花があるとすればそれは溜息の声。淡ければ淡いほどよい。どこまで届くかではなくどの人に届くかの声だから。」
付箋
腰まげて坐るかたちのさびしさの老と書きつつ老と読みつつ
朝に見しベンチのひとはそのままの形にをりぬこの夕暮れも
紙飛行機とびて落ちたり春の日のひかりの波のなかほどにして
春風に飛びゆくビニール袋さへゆきたきところあるやうな日だ
座喜味城址の松の林に拾ひたる琉球のかぜのおとしもの
ふかぶかと垂れゐる藤のはなぶさは春のふかみへおちゆくことば
