横山未来子「水をひらく手」（2002年；短歌研究社）
こめんと
第２歌集。透明で静かな世界。こころの上澄みだけを歌にしてみせているような かすかなかげりも美しい。でも作者はつらくないのだろうか。
付箋
草叢にあまたの光ちりばめてしづかに雨は朝を離れつ
忘るとは解かるることと知りたるにみづから紐を結びなほせり
深き井戸に落とさばやがて返り来むわがものならぬこゑ冬のこゑ
地続きに秋拡がれりこほろぎの迷ひこみたるわれの部屋まで
見つむる先は互いに訊かず足音のときにかさなるやうに月日を
風ひとすぢ頭上を抜けつわづかなる時間差ありて葉擦れ湧きたり
こゑのみにて人と繋がりゐる時間 葉の揺れて雨の始まり知りぬ
指の腹に押し付けて塩の粒ひろふ薬指ゆゑのしづけさ見をり
