河野裕子「庭」（2004年；砂子屋書房）
こめんと
第12歌集。平易な言葉で日常を歌うが歌人の非凡な目を通すと 日常が河野裕子の世界になる。澄んだ心に映しだされる世界は 静かで愛しい。
付箋
自らを励ます力ある言葉一夜をかけて歌作るなり
傘さして歩く私を見おろして紡錘形なり大きな鴉
寒けれどものの匂ひのふくらみて大気はゆつくり春へと動く
ひとりぺたんとこの世に残され何とせうひいといふほど椿が落ちる
雨脚が透けて見ゆるよ九月に入り初めてのあめ雨音たてず
気を抜けばがらんどうになるゆゑにあを空のした影締め歩く
