山下洋「オリオンの横顔」（2007年：青磁社）
こめんと
第1歌集から９年後の第2歌集。
付箋
号砲を待つ脚たちの筋肉のひくひくとする緊張が見ゆ
脚を引き抜かれしままに制服のズボンの黒が床に固まる
文字ひとつ欠落したる電飾の瞬くさまをじっと見ている
物干しに物干しながらオリオンの横顔を見る午後十時半
スプリンクラーがフィールドの芝に撒く虹に首さし入れて滴を浴びる
そも何を支えるということもなく少し疲れている床柱
赤本を抱えて訊きにやってくる何時しか受験生の顔して
<俺達>と何気なく言う人といてやっぱり疲れるんだよとても
メンバーがちょうど６人のバレー部に今日も子は出てゆく春休み
かつて立ち給いし３２キロ地点初村さんの声が聞こえる
藤棚の下にコンビニ弁当の蓋の軽きを開きて寄りぬ
「本質的な歌の苦労を望みたい」あなたにいただいた大切な言葉
田中栄さんを悼む
