小澤婦貴子「月光の牧」（2015年；青磁社）
こめんと
第5歌集。帯・花山多佳子。夫亡き後の一人の暮らしの中で詠まれた歌。確かな力量を備えた第5歌集と帯にある。
付箋
沈む夕陽呑み込むやうな大あくび思はず出たり山のまばゆく
県ざかひ過ぎれば景色変はりたり枯野に灯る朱き柿の実
ばあちやんのエプロンは化粧回しとなり二人の幼どすこいどすこい
「雪嶺は横書きの手紙」と詠みし人おもひ見てをり八ヶ岳の屋根
引き寄せる力持つなり向日葵は田畑の畔に日時計のごと
行き場なき雪はホームの中央にでんと積まれて高き嵩なす
観覧車のぼり詰めればそののちは下るほかなし海山眺め
