勝手に付箋

加藤美智子「真珠のいろの陽を掲げ」(2016年;青磁社)

こめんと

第1歌集。序・永田和宏。表題の歌集と連作集「アーネジェウ」との2冊組。1975年に塔へ入会。

付箋

絞り機にかけし遊び着のポケットに草の実つぶれて淡き色染む
一瞬に自動改札くぐりたり舌出すごとき切符の温し
まっしぐら上る花火に師の顕ちぬ「われは真実を生きたかりけり」
手作りのテレヴィ観せんと言いし父の切手貼らざりし部品註文書
賞のための書にあらざれば後の代に清すがと照る『明月記』なり
ガスボンベちんまり背負い野焼き人ひくき炎を煙を追いつつ
呆けたる白寿の母が掌を合わす三代目(みたび)を祀るお宿の人形(ひいな)に
震度四過ぎたり風呂場に方形の湯はゆたゆたといまだも揺れて

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