立川目陽子「螺旋のつぼみ」（2010年：青磁社）
こめんと
第1歌集。跋：日高堯子。平静な歌いくちで確かな力量が感じられる。跋文にあるように「自分の生きる日々を平易な言葉で率直に歌うことはしかしそんなにたやすいことではない。」それを辛抱強く歌っているところがいい。
付箋
子への手紙小さき文字にうめゆけば筆圧つよきいちまいとなる
ひそやかに日傘の影を踏みながら真昼の路地へ迷ひこみたり
あさがほが白き門扉に四つひらき吾のみ出で入る曇る一日を
筋肉のない言葉ばかり言ひつづけいちやう落ち葉の層の上をゆく
合併後の元町長がきびきびとトンカツ揚げる食堂の昼
混みあへるレジのむかうに教師なる夫が後ろ手くんで見回す
草かんむりの漢字自づと多くなる離れ住む娘への春の手紙は
おそらくはみな良き母になりにけむ教室に我をいぢめし友ら
冷凍の小ぶりの秋刀魚売られゐて去年のかたき光をはなつ
犬の墓に夫は落葉をすくひてはふはつとふりまく羽毛のやうに
