花山周子「林立」（2018年；本阿弥書店）
こめんと
第3歌集。杉を題材にした意欲作。それが成功しているかは私にはわからないが、ごつごつした文体と荒っぽさは魅力。
付箋
遊覧船しまわれているみずうみにつぎたされつぎたされ空の青色
腕失いしマルスの像は失いし腕のつづきの創造をせり
前髪を切り揃えゆくさりさりと鋏の音を目を閉じて聞く
約１００℃の高温強制乾燥に杉が嘔吐せるべたべたのもの
老いてなおうさぎは白きままにして一反木綿のごとくのびおり
千本松の木陰に猫がたむろしてくつろいでいる重い潮の香
千代田線は常磐線に切り替わり背高泡立草に雨降る
目黒川見下ろしているこの窓をこれから私はずっと見つめる
カーテンのまだついていない窓の端に外に流れる生活を見る
わが部屋にしまわれている白うさぎ白い睫に眸をしまう
紙風船が吹かれるほどの風に浮くさくらはなびら川は吸い寄す
瓦礫撤去されたるのちの真っ平ら日時計のように立つ人が居る
大海に子供を釣りぬこの子供われが育てん楽しく育てん
