塩谷いさむ「琅かん（王へんに干）」（2008年：青磁社）
こめんと
第２歌集。河野裕子序。「長い人生を生きた人にしかない淡々とした風情がこの人にはあり、この歌集もまた同じような佇まいをしていて滋味というのはこういう場合に使うのがふさわしい気がする。」と序文にある。
付箋
こんなにも淋しい秋があつたのか 妻の墓標に夕日が走る
地平線に真つ赤に沈む太陽を見てゐた大陸 今は外つ国
水槽のおたまじやくしが懐手の中からぬつと手を出して来る
暑いとか寒いとかをば言ひながら何時しか人は彼岸へ渡る
「元気です」一行だけの文を書きいのち捧げしとほい青春
