篠原節子「雨のオカリナ」（2019年；角川書店）
こめんと
第2歌集。帯・米川千嘉子
付箋
少し勝ち少しは負けて今日は雨、耳あかるます君のオカリナ
Ｂ２９くるよと爆撃言ふ母は十六歳に戻りてゐたり
息つぎて春空みれば母は亡くふかく生きよと声きこえくる
電柱に鴉鳴く夕いい匂ひに湯気のぬくもる飯たきあがる
円満な人になかなかなれなくて水族館にハリセンボン見る
さえぎるもの何もなかりし青天の秋を映してゆるる鴨川
指笛のリズムに踊れば何もいらぬ皆の笑顔に六調たかなる
君引きし一本の線にあみだくじ決まつてしまふ運命の席
恋ふ人を呼ぶがに灯る蛍火をかぞへるごとく歌おもひいづ
しんがりの鉾のすぎれば折り畳みの信号もどす警官「よーし」と
