棚木恒寿「天の腕」（2006年：ながらみ書房）
こめんと
「音」所属。第一歌集。滋賀県の高校で数学を教えている。
付箋
検閲にむかし残業ありしかな採点にわれは魅了されゆく
忽然と電話の主はあさましく黒い感情を保護者とぞ呼ぶ
裾にちいさな火がついていた そのような僻覚ありて秋空は澄む
ランチュウに擦れ違いたる心地せり妬ましく冬の廊下をゆけば
ままよとて腕投げ入るる闇のなか母音ありけり明治のひびき
黙読の人は自愛を含みつつその猫背より立つ秋がある
カレーライスとライスカレーの違いかな秋陽に混じる夏の光は
LATEXで打つレポート今朝清しくて∫の伸びあがりゆく
一グラムの空気の体積示すため教師の持って来たる空箱
