土屋千鶴「風景は光に揺れて」（2011年：春風社）
こめんと
第１歌集。解説・岡部史。大胆かつ繊細に「風景」の中で繰り返される「われら」の物語を紡いでいる。（解説より）
付箋
風景は光に揺れて向かい来るわれらの前にただ向かい来る
闇きよりふいに碧へと移りゆく 真夜なれど森は明けぬる
輪郭の重なり合いし兄弟の顎の二重に月光揺るる
曲がり角走って来たる自転車の長き影折る冬の舗装路
わからない他国の言葉聞きおれば九州なまりの節に似てくる
冬風に吹かれて思う 白骨の軽さと身体の重き温もり
「好きやわ」と関西なまりの抜けぬまま「仙台はええとこ」と友は言う
