勝手に付箋

沼尻つた子「ウォータープルーフ」(2016年;青磁社)

こめんと

第1歌集。栞・伊藤一彦・服部真理子・吉川宏志。歌壇賞次席作品などを収める。

付箋

みずからにつけたる姓の沼の淵われはときどき覗きこむなり
折紙の裏へ手紙を書く七歳 叱られしのちは水色を選る
まひるまにしゅわしゅわ消えてゆきそうで息子を日傘のうちに引き込む
四百五十円にてわれと娘のみの戸籍謄本を交付さる
凭れいる常磐線の窓越しに遠のきながら花火散りゆく
ことごとく投げだされたる本のなか防災頭巾の娘が眠る
レシートへ硬貨を乗せる 客の掌にわれの冷たき掌がふれぬよう
練習中に二度つぶれたる喉もて応援団員の娘は歌う
コンパスの銀を立たしめ女児は円の数だけ孔を穿ちぬ

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