内山晶太「窓、その他」（2012年；六花書林）
こめんと
第1歌集。歌歴は20年になるが初めの10年の歌は入っていない。良く解らないが惹かれる歌が多かった。（借りて読んだ）
付箋
たんぽぽの河原を胸にうつしとりしずかなる夜の自室をひらく
春の日のベンチにすわるわがめぐり首のちからで鳩は歩くを
おしろいばなの匂いおもたく路地をゆき滅私のこころ流れ寄りたり
自転車の灯りとなりて過ぎてゆくものを暮らしのお守りとして
人界に人らそよげるやさしさをうすき泪の幕ごしに見き
いつか泣く日々ちらばりて見ゆるなり木の間隠れの街の明かりが
ごちそうの夢と一生と引き換えにゆくたんたんと靴を鳴らして
音無の上野公園に風あふれ人の帽子は飛んでゆきたり
ひよこ鑑定士という選択肢ひらめきて夜の国道を考えあるく
ぶらんこの鎖つめたくはりつめて冬の核心なり金属は
目覚ましを掛けずに眠りゆくことの至福よふかいところまでゆく
開かれし傘ことごとくはりつめて飯田橋陸橋を行き交う
頭よりシーツかぶりて思えりきほたるぶくろのなかの暮らしを
鳥瞰は胸にひろがる酸味とも町並みにこわれものの雪ふる
