石本照子「山法師」（2018年；青磁社）
こめんと
第3歌集。90歳を超えてなおフットワーク軽く歌を詠み続ける作者。細やかでさわやか。
付箋
くびすじに冷えし手指を当て居ればやがて体温通いはじめつ
丈高きみずきの花の皆開き風のつたうる白きよろこび
今風が何か伝えし如くにてけやきの梢がてんでに動く
使い慣れし針箱の中の道具たち目打ちは祖母の使いいしもの
次のつぎの日曜午後と言い合わす大人ばかりで行く動物園
拙くも敬語をわれに使わんとして優太のあたま回転している
日の落ちしをほとりと気付く夕刊をとりに立ちたるいつもの時間
駅ビルの廊に下りたる仔燕をはげます親きて共に飛び立つ
駅ビルの梁高くつばめ声上ぐる彼岸過ぎなり今年も来たね
白き掌浮かせるようにやまぼうし山ゆけば見ゆここにかしこに
おしまいまで一人暮しは続くだろう掃除の手伝いロボットにさせる
